より十五夜素敵な頂

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< 月 に 兎 >

 

 

「あ、満月綺麗に出てますね」

 

休みだった野分と大学帰りに合流して、外食をしに行った。

 

 

「ガキの頃、月に兎がいるって結構マジで信じてたんだよな」

 

思い出したことを何気なく口にすれば、隣からクスリと笑う声が聞こえた。

 

「ヒロさん、かわ」

 

「うるせーな」

 

言い終わる前に遮る。

コイツが言いそうなことは大体分かる。

 

 

「でも何で兎なんでしょうね」

 

「さぁな。影がそう見えるんじゃねーの?」

 

詳しくなんて知らないから、適当なことを言ってみる。

 

 

「あぁ、でも確かにあの辺とかそう見えるかも」

 

 

立ち止まってそう言うから、思わず野分の指差す方向を見上げた。

 

 

 

ふいに視界が黒く染まる。

唇にあたる、吐息。

 

 

 

「ば…っ!!何してんだよ!!

 

寸での所で、ドン、と突き放した。

 

「すみません、つい…」

 

「つい、で道端でキスしようとすんなよボケ!!

 

「でもヒロさんが上向くから、何か条件反射で」

 

「そんな反射があってたまるか!!

 

 

その場に野分を置いて、ずんずん早足で歩き始める。

待ってください、と追いかけてきた野分にあっさり追い付かれてしまったが。

 

 

 

満月が夜を照らす。

 

 

月は昔から美しさの象徴で。

 

こんな綺麗な夜なのだから、たまには許してやってもいいかもしれない。

 

 

 

「野分」

 

「はい?」

 

 

こちらを向いたその襟元を引き寄せて、小さく唇を触れさせた。

 

 

一瞬ぽかんとした表情を浮かべた野分だったが、瞬く間に笑顔に変わる。

そのまま抱き締められそうになったのを、慌てて避けた。

流石にそれは恥ずかし過ぎる。

 

 

また早足で歩き始めると、パタパタと後ろから付いてくる足音。

まるで犬みたいだ。いや、確実に犬だ。

デカくて、真っ黒で、

 

綺麗な夜の色をした。

 

 

俺は夜を照らす太陽にはなれないけれど、

できるならお前の中で光る月になりたい。

 

 

バカみたいだ。

柄にもなく、そんなことを願った。

 

 

    

 

 

 


* * * * * * *

 

月の輪堂【七夕クイズ】の、唯お一人の一発全問大正解者様でいらっしゃる

エゴオンリーサイト「ストロボ」ヘキ様から、

素敵な素敵な「お月見SS」十五夜の夜に頂いちゃいました!

 

クイズプレゼント(正解者様の夢を月の輪が叶えちゃうシステムです)のお礼とのことで、

もちろん正解者様の当然の権利なのでお気遣い不要なのですが、

ヘキ様のお優しいお心が嬉しくてたまらないクマですw

 

ヘキ様、愛が一杯の素敵なSSを本当に有難うございました!!

これからも、エゴオンリーサイト同士、どうぞ仲良くしてやって下さいませ!

 

2008/9/14

 

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