お誕生日 プレゼント (その2)

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  こいつは、キス泥棒だと思う

 初めてのキスは、寝込みを襲われたし

 最近は、いきなりキスしてくる
 まぁ、軽く唇が触れるだけのものだけど

 「許可なくすんな」

 と言ったら

 「じゃあ、許可を求めればいいですか?」

 「い、……いちいち聞かれるのも、その」

 返答に困る。

 そりゃ、キスは、嫌いじゃない、けど。

 「じゃあ、名前呼びます。返事したら、OKと思いますね」

 「って、おいっ!!勝手に決めんな!」

 以来。今に至る


 「ヒロさん」

 「ん?」

 自然に、普通に呼ばれるから
 つい顔をあげて
 奴の策略にはまる

 慣れた手つきで顎を持ち上げられ、軽く唇が重なる

 「……野分。てめぇ」

 顔が赤くなっていることを自覚しつつ、野分を睨み付ける

 けれど、まっすぐに、俺を見つめてくるから…

 「……いい。何でもない」

 「そうですか?」

 嬉しそうに笑いながら
 見つめてくるから

 直視、できなくて
 顔を逸らす

 すると
 髪をなでながら…

 「ヒロさん、かわいい」

 いつものセリフ

 「ヒロさん」

 また野分の顔が迫ってきて、そのまま唇が重なる
 触れるだけの軽いものではないそれに、翻弄される

 野分の服に、しがみついて……

 「ヒロさんは、本当にかわいいですね」

 「うるせぇ!」

 首筋に吐息がかかり、ぴくりと反応してしまう

 「かわいい」

 「っ、だからそれは、男に使う形容っ…あっ」

 するりと腰をなであげられて、
 つい声があがってしまい、
 慌てて口を手で塞ぐ。

 「ヒロさん、かわいい」


 こいつは、キス泥棒ですまないかもしれない。


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コメント
「おぼれる」を実践すべく書きなおし。
おぼれる、までいってないような気がしますが、
いかがでしょうか?
「3」は野分視点。


(その3)弘樹…野分視点

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