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秋→ヒロ
 ┗Thanks!9500Hit 月の輪様



手が自然に伸びて
髪を撫でる

その髪の感触は
小さな頃から
まったく変わらない

「弘樹」

名を呼ばれて
無防備に
見上げてくる顔

「弘樹」

少しだけ屈んで
顔を近付けて

「秋彦?」

柔らかそうな唇に
重なる

その瞬間に
目が覚めた。

「……夢、か」

ほっとしたような
残念なような気分で
髪をかきあげる

ベッドから起き上がり
コーヒーをいれて飲む

「おはようございます!宇佐美先生!
当然、原稿は仕上がってますよね!?」

大きな声と共に
相川が部屋に入ってきた

「……相川。せめて一度チャイムをならせ」

用意してあった原稿を
渡しながら
そう告げれば

「居留守使うのはどなたですか?」

相川はにっこりと笑って
原稿を受け取って
反撃してくる

「先生。寝てもいいのに、コーヒーですか?」

「寝てて、今起きたんだよ」

「そうですか。じゃぁ、原稿、お預かりしますね」

相川の背中を見送った後
やることもなく
もう一度寝ようと
ベッドにもぐりこもうとしたけれど

眠れない

コーヒーは失敗だった
そう思う

「……」

むくりと起きだして
外へ出る。

向かう先は、
弘樹の部屋。

夢ではなく
本物に逢いたいから

弘樹のベッドなら
どんな時でも
安眠できるから。

弘樹の側なら
安眠できるから。


********

部屋に入れてもらい
足を踏み込んだ瞬間に
見たくないものが見えたけれど
見ないふりして
ベッドにもぐりこむ。

「お前は。俺のベッドは、避難場所じゃねぇぞ?」

「弘樹」

「なに?」

「何かを抱きながら寝たいんだが」

「んなの、ぬいぐるみでも買って来い」

ぐいっと手をひっぱって
胸の中へと閉じ込める。

「なにすっ……」

「とりあえず、コレでいい。安眠させろ」

「バカっ!はなせっ!!オレはものじゃねぇ!」

暴れる弘樹を押さえつけて呟く。

「今は、ぬくもりが欲しいんだよ。寝るまででいい」

そう。寝るまででもいい。

「次回から、ぬいぐるみでも持参して来い。」

お前を、しばらく

「今回だけ、特別だからな」

独占させてくれ。




見たくないものが見えた
信じたくない



そっと流し台にあった
二つのご飯茶碗。

それは

弘樹の隣に
誰かがいるということ
弘樹が、誰かを、
迎え入れたということ。


『すいません。ヒロさんは、俺がもらいます』


あの子だろうか?


腕の中の弘樹を
ぎゅっと抱きしめて
眠りに付く。

今だけは

この瞬間だけは


俺の、
俺だけのものだと
そう信じて……




弘樹

俺は………


<コメント>
9500Hit踏み付け、ありがとうございました。
今回は、秋>ヒロ⇔野分状態です
ヒロさんのベッドで安眠。がテーマだったわけですが。
いつの間にやら、ヒロさんのぬくもりがテーマになってた気がしますね。

さて、PC版だけ、おまけ付きですvv



「……ん」

目が覚めたとき
無防備な唇が
目の前にあった

近づいて
重ねようとして

できなくて

そっと髪に触れる

「……ん。の、わき?」

寝ぼけ眼のまま
呟かれた言葉に
ショックを受ける

「あ……いや。その」

目の前にいるのが
俺だと気づいて
弘樹が顔を真っ赤に染めて
いいわけを口にする

それを見て
本当に、
もう自分だけのものじゃない
いや、
自分のものじゃなくなったことに
気づかされた

「……ありがとな、安眠できた」

「そ、そうか」

ベッドから抜け出して
顔を洗う

  

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あきらめなければならない

あきらめなければならない




何度も、呟く


「また、来る」

また、はなかなか、ないだろうけど
そう言って
部屋を後にした



「……」

たまたま目に入って
目があった
くまのぬいぐるみ

触った瞬間に
思い出したのは
弘樹の、髪

「お客様。商品にはお手を触れないでくださ……」

「買うなら、問題ないだろう?」

その場で現金で買って
部屋へ持ち帰る

名前は、何にするか……




End

 

りぃ。様、

月の輪の大好物、秋彦→弘樹のお話を、

またまた、無理言って書いて頂きました。

「自分で書けよ!」な危険思想にも関わらず、

いつも素晴らしい作品をありがとうございます!

感謝感謝でございます!

挿絵代わりのクマ劇団ミニマム画像を

ご一緒させて頂く無礼をお許し下さいませね?

2007.11.23

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