**「白地図に色付け」のHONAMI様の素敵フリー小説第二段**

 

 

 

久遠の通い路

 


「ヒロさん、はい、お水汲んで来ました!」
「おう、悪ぃな。じゃ、それちょっとずつ上からかけてくれるか。」
「はい。…このくらいですか?」
「ん、そんなもんだな。」


 今日は野分と二人で、墓参りに来ている。
 せっかく久々に休みが合ったというのに、

ウチの親ときたら突然電話をかけてきて、
『お盆なんだけど、ママお友達と約束しちゃって〜、

お迎えには行けるんだけど、ヒロちゃん送りに行ってくれない?』
 だぞ!?
 断ろうかとも思ったのだが、忙しさにかまけてずいぶん長い間

墓参りに行ってなかったのも事実だし、それに。


「ヒロさん、もうお花入れていいですか?」
「ああ…」
 野分がやけに乗り気で一緒に行くと言い出したのだ。

そして今もテンションは高いままで。墓参りの何がそんなに嬉しいんだ?
 まあいいか。

とにかく、せっかく来たんだ。ちゃんと挨拶して行かねーとな。
 野分と並んで、手を合わせた。

 ――えっと、あんまり来なくてゴメン。仕事が忙しくて。

だけど、忙しい分充実してるよ。

仕事も、それから…。

 祈り終わって隣を見ると、野分はまだ何か熱心にぶつぶつ言っていた。
 何祈ってんだ?
「…ご子孫は、俺が幸せにしますから!」
 おい!
「てめー何言ってんだ!」
「あ、聞こえちゃいました?」
「聞こえちゃいましたじゃねえ! 何言ってんだっつってんだよ!」
「ですから、『ヒロさんは俺が幸せにします』って、ご挨拶を。」
 …なんじゃそりゃ。
「ご家族にはまだ挨拶させていただいてませんけど

、せっかくですから、先にご先祖にと思いまして。」

 

忘れてた。コイツはこーゆーヤツだった。


「それに、俺こういうの初めてですから、なんか嬉しいんです。

…家族の一員になれたみたいで。」


「…みたいとか、言うなよ。」
「え?」
「な、なんでもねーよ! 

ほら、終わったんならさっさと片付けて帰るぞ!」
「はい。あ、ヒロさんは、なんてお祈りしたんですか?」
「へ? べ、別に、フツーに…あんまり来れなかった事謝って、

あと、近況報告だよ。」
「どんな事ですか?」
「だ、だからフツーの事だ!」


 ――それから私生活も、充実してるよ。

お互いに寄り掛かれる奴が、いるから。
 たぶん、ここに来るまで、ずっと。



   END


 

 

 

2009.8

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