お誕生日 プレゼント

  (その1)秋彦…弘樹視点 
(その2)野分…弘樹視点
(その3)弘樹…野分視点

(その1)秋彦
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 俺の中を占めていたのは
 幼馴染みの秋彦
 お前だった



 秋彦(おまえ)のことが
 好きで
 好きで……
 好きで………

 でも。

 だからこそ
 告白することもなく、ただ側にいて

 お前の恋を
   応援して

 お前の恋に
   傷ついてた



 電話で呼び出されて
 駅前の喫茶店で
 待ち合わせ

 それだけのことで、昔は浮かれてたのに
 今は……。

 秋彦は、何も変わってないのに
 ……変わったのは
 俺の気持ち
 変えてくれたのは……あいつ


 「弘樹?どうした?人の顔、じろじろ見て」

 「あ、いや。……つかれた顔、してんな〜って思って」

 「一昨日から寝てなくてな」

 「じゃあ、今日は早く寝ろよ」

 お前の手が静かに伸びてきて
 俺の髪に触れる

 くしゃりと髪をなでる
 お前の、手が
 とても、好きだった。

 「いつもの弘樹にもどったな」

 頭を撫でながら優しく笑う
 お前の顔
 好きだった表情

 「……はぁ?」

 「悩んでたか、落ちこんでただろう、お前」

 くしゃくしゃと髪をなでるその手を払いのける

 「触るな」

 「本当にさ、心配してたんだよ」

 優しいその声に
 その表情に

 昔は
 ドキドキして………
 傷、ついて

 「……論文で、疲れてただけだよ」

 「そうか?」

 お前を思う、気持ちには、
 気付かなかったくせに
 お前はよく俺を見てる。
 俺を、わかってる。

 お前のことで
 悩んで、傷ついて、落ち込んでた
のは、事実だったから。


 「そうだよ。で、何?用かあるから呼び出したんだろう?」

 「ああ。これ」

 差し出されたのは、かなりの量の原稿用紙の束

 「一応、書き終わったから、読んでもらおうと思ってな」

 「担当には?」

 「お前が一番最初の読者だよ」

 「ふぅん」

 読み始めながら思う

 よく、お前の一言に
 振り回されたな

 俺は、お前の特別

 そう思わせるそんな一言に

 振り回されて

 期待して

 落ち込んで





 「どうだ?」

 「ん。面白い」

 「そうか、ありがとな。いきなり呼び出して悪かった」

 原稿用紙の束を返して、心配なので、助言する。

 「もう家帰って寝ろよ。すげー顔してるから」

 「悪いな。そうさせてもらう」

 「ああ、じゃぁ、またな」

 店を出て、見送って……
 お前と離れて、
 改めて、気付かされた。

 昔は、離れがたいって思ってたクセに。


 今、俺の中を占めているのは

 秋彦じゃない。



 「さて、俺も古書店寄って帰るか」

 古書店で本を物色して、帰る途中

 「あ」

 見つけたのは

 働く姿の

 俺の中を占めるやつ


 目の前にある喫茶店に入って
 ありきたりなコーヒーを頼んで、
 お前を見れる場所を陣取って、
 声をかけるわけでもなく、ただ見つめる。


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コメント
「付き合い始めた直後、ヒロさんの気持ちが秋彦から離れて、
野分に溺れていくお話」
む、難しいです。

おぼれて・・・・おぼれて・・・・
いってくれない(泣)
秋彦を登場させたのは
不味かった。
長いです。登場が。
野分なんか、数行なのに・・・

第2話に無理やり続く、
というやり方をしました。
すいません。

   (その2)野分…弘樹視点

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